「アリス」「ピーターラビット」「クマのプーさん」などイギリスの児童文学は、日本での知名度はもちろん、世界的にも有名な作品がとても多いことで知られています。
それもそのはず、実は児童文学という一大ジャンルはイギリスで誕生し、確立されたものなんです!
今回は、そんなイギリス児童文学にまつわるお話と、おすすめの作品を紹介していきます。
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イギリスで児童文学が発展したワケ

「児童文学」と呼ばれるジャンルは、19世紀から20世紀にかけてのヴィクトリア朝時代のイギリスで確立され、子どもたちが楽しめる冒険やファンタジーなどのユーモアや想像力にあふれる作品が次々と生まれました。
それ以前にも、ペローやグリム兄弟、アンデルセンなど、ヨーロッパ各地で子ども向けの本はありましたが、あくまで単発的なもので、ジャンルとして確立されてはいませんでした。
イギリスでも、宗教的な価値観に基づいた教訓や道徳などを説くものがほとんどで、子どもが純粋に楽しめる娯楽としての本はあまりなかったのです。
そんな状況を大きく変えたのが「産業革命」。

イギリスは産業革命によってどの国よりも早く豊かになり、18世紀から19世紀初頭にかけて、経済的に余裕のある中産階級の人々がどんどん増えていきます。
経済的な余裕が生まれると中流層の子どもたちが増え、労働者階級の子どもたちも日曜学校などへ通うようになるなど、子どもたちに対する教育や道徳の普及が熱心になっていきました。
その過程で娯楽性を求める声が大きくなり、大衆の子どもたちが楽しめる作品やファンタジー作品が生まれ、児童文学の芽が育っていくことになります。
※印刷技術の進歩により、本に美しい挿絵が盛り込まれるなど、より物語をイメージしやすい絵本や子ども向けの作品を作れるようになったという背景もあります。

そしてその芽は花開き、ヴィクトリア朝時代になると一大ジャンルとして確立されるほどの盛り上がりをみせます。
この時代は「大英帝国」と呼ばれる、世界中に領土を拡大するなど栄光を迎えた華やかな時代です。家具やお洋服をはじめ、様々な文化や芸術、児童文学の名作などが生まれ、大きな人気を博しました。
こうした作品はヨーロッパ全土やイギリス領地などに広がり、世界中で広く読まれることにつながっていったのです。
「英語」が、今でも世界で最も使用されている言語ということを考えても、英語で書かれた書物が、どれだけ世界に影響を与えてきたかイメージできるのではないでしょうか!
イギリスのおすすめ児童文学作品18選
ここからは、そんなイギリスで生まれた児童文学作品たちをピックアップして紹介していきます。
作品数がとても多く、紹介しきれないほどですが、今回は18冊の素敵な作品を選びました。
映画化やアニメ化もされていたり、読んだことはなくても一度は聞いたことがあるような作品が多く、どれも素敵な物語ばかりです。
考えさせられたり、童心にかえったりするなど、子どもだけでなく大人の方でも楽しめるので、ぜひ参考にしてみてくださいね!
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クリスマス・キャロル
19世紀のイギリスを代表する作家、チャールズ・ディケンズの名作で、「世界で最も有名なクリスマスのお話」ともいわれています。優しく、心温まる物語は、過去、現在、未来での出来事を通して、人生における大切なものに気づかせてくれます。大人になって読み返しても、すごく心にしみるものがありますよ!
不思議の国のアリス
うさぎ穴に落ちたアリスの大冒険を描いたこの物語は、イギリス児童文学では絶対に外せない名作です。それまでの教訓的な作品とはまったく違う、夢やユーモアを与えてくれる物語で、まさに児童文学の転換点になった作品の一つといってもおかしくありません。ことば遊びや風刺、挿絵も面白く、続編の「鏡の国のアリス」とあわせておすすめです!
ピーターラビットのおはなし
ビアトリクス・ポターが20世紀初頭に生み出した絵本シリーズで、今なお世界中で愛され続けている物語です。イギリス北部の湖水地方を舞台に、イタズラ好きなピーターと仲間の動物たちの様子が生き生きと描かれます。美しい自然や生き物への愛情を感じることができる、私も小さい頃に憧れた本当に素敵な作品です!
ピーター・パンとウェンディ
20世紀初頭にイギリスで生まれた小説で、ディズニーの名作「ピーターパン」の原作となった物語です。子どもだけの島「ネバーランド」での大冒険を描いていますが、ディズニー映画のイメージとはずいぶん異なり、子どもならではの無垢な残酷さや社会風刺なども感じられます。大人の方も読んでみてほしい作品です!
クマのプー
1926年に発表され人気を呼んだ、ディズニーでもおなじみの愛くるしいキャラクター「くまのプーさん」の原作となる物語です。穏やかで温かみのあるお話と、ノスタルジックな森の世界を堪能できます。今作は、「カラフル」や「風に舞い上がるビニールシート」などで有名な作家、森絵都さんが翻訳したものになります。すごく読みやすく、スラスラ読めますよ!
チョコレート工場の秘密
こちらはロアルド・ダールが1964年に発表した作品で、ティム・バートン監督とジョニー・デップのタッグで製作された名作映画「チャーリーとチョコレート工場」の原作となった小説です。個性豊かなキャラクターと想像力豊かで魔法のようなストーリーが楽しすぎます!大人でも楽しめるので、映画とあわせておすすめです!
マチルダは小さな大天才
こちらもロアルド・ダールの作品で、4歳にして読書好きの天才少女マチルダが、抑圧ばかりしてくる横暴な大人たちに立ち向かい、仕返しをしていく模様をユーモアたっぷりに描いています。悪い大人たちを小さな少女がこらしめていくのは爽快で、笑えます!きっと読書後にはマチルダのことが大好きになりますよ!
思い出のマーニー
孤児の少女アンナが、海辺の村でマーニーという不思議な少女と出会い、交流し、成長していく様子を描いたファンタジックな作品です。日本を舞台に置き換えた作品として、スタジオジブリがアニメ化したことでも有名ですね。心の動きが丁寧に描かれた、愛を感じられる温かい物語なので、余韻に浸りたくなります!
メアリー・ポピンズ
パメラ・トラヴァースが1934年に発表した作品で、ディズニーの映画や舞台ミュージカルでも有名な「メリー・ポピンズ」の原作となった物語です。映画とはイメージが異なるメアリーのキャラクター、そっけない態度の数々、バンクス家の子どもたちとのやりとりを楽しめます。今作は全4冊ですが、どの巻もワクワクできますよ!
幸福な王子
19世紀後半のヴィクトリア朝時代を代表する作家、オスカー・ワイルドの作品です。幸福な王子を含めた9つの童話集が収録されています。キリスト教的な考え方がベースにあり、夢を抱かせるようなお話ばかりではありませんが、表題の「幸福な王子」や「ナイチンゲールと薔薇の花」など、大人になってから読み返しても楽しめます。
フランダースの犬
イギリス人作家のウィーダによる19世紀後半の作品で、アニメなどでも有名な物語です。ベルギーのフランドル地方を舞台にした、ネロとパトラシエの悲しいお話ですが、今作は、「赤毛のアン」シリーズなども手がけた村岡花子さんを訳者に、「ニュルンベルクのストーブ」も収録されています。涙なくして読めません!
ロビンソン・クルーソー
1719年に発表されたダニエル・デフォーの作品で、船乗りのロビンソン・クルーソーが無人島に漂流し、28年もの年月をサバイバル生活する模様が描かれています。何度失敗しても挑戦し、生き延びるためのあらゆる工夫を繰り返す不屈の精神力に感銘を受けます。冒険モノが好きな方には強くおすすめしたい1冊です!
ガリヴァー旅行記
デフォーと同時期の作家、ジョナサン・スウィフトの作品で、こちらも有名な物語です。ガリヴァーが経験してきたさまざまな国での様子が描かれた冒険小説で、今作では小人の国と巨人の国が登場します。岩波版などでは空飛ぶ国、馬の国など他の国の冒険も読めるので、読む難易度は上がりますが気に入ればそちらもおすすめです!
ロビン・フッドの愉快な冒険
中世イギリスの英雄で弓の名手としても有名な、ロビン・フッドの伝承物語です。悪代官から金品を奪い、弱者を助ける正義の味方、ロビンの伝説的な活躍や冒険の様子が描かれます。美しいシャーウッドの森での、仲間たちとの愉快な生活模様がとても印象的で、ワクワクさせられますよ!
アーサー王物語
長く語り継がれ、ゲームやアニメなど多くの作品に影響を与えている、古典文学の名作です。元々は大長編ですが、今作は、アーサー王の誕生から最期を迎えるまでの伝説や、円卓の騎士たちの活躍ぶりが、テンポよく1冊にまとめられています。アーサー王伝説の入門書としてピッタリですし、騎士道や、エクスカリバーなどの有名な道具も楽しめますよ!
くまのパディントン
ロンドンにあるパディントン駅にちなんで名付けられたクマのキャラクターは、映画化もされるなど世界中で人気を呼びました。全7冊の絵本もおすすめですが、今作品は全10冊の活字本で、ペルーからロンドンへやってきた子グマが巻き起こす騒動や活躍の様子を楽しく描いています。素直なパディントンを愛さずにはいられません!
ホビットの冒険
20世紀を代表する作家トールキンの名作で、映画化もされました。「中つ国」と呼ばれる世界を舞台に、「指輪物語」の前日譚となる壮大な冒険を描いた物語です。緻密に作り込まれた設定や繊細な描写によってイメージがとても想像しやすく、ビルボと一緒に旅をしている気持ちになれます!何度読んでもホントにとってもワクワクしますよ!
ナルニア国物語
1950年代に出版されたC・S・ルイスの長編ファンタジーで、異世界モノとして多くのファンに愛されている作品です。今作は、2017年に発売された新訳版で、全7巻になります。新訳なので、言葉がすごくわかりやすく物語に入り込みやすいのが特長で、4人兄弟の大冒険や、成長していく様子に心躍ること間違いありません!
まずは有名なイギリス児童文学作品から楽しもう!
いかがでしたか、イギリス生まれの児童文学作品を18冊紹介しました。
やっぱり有名な作品は、長く愛されているだけあって、内容もユーモアたっぷりで素晴らしいものが多いです!
今回は「ロビンソン・クルーソー」や「ガリヴァー旅行記」などは読みやすい版のモノを紹介しましたが、興味があれば、より原書に近い翻訳の作品を探して読んでみるのもおすすめです!
このほか、バーネットの「秘密の花園」や「小公女」、ヒュー・ロフティングのドリトル先生シリーズなど、イギリス生まれですが、アメリカで活動していたために除外した作品もあります。
また、ハリーポッターシリーズなども、今やイギリスを代表する児童文学作品といってもいいかもしれませんね!
選び始めるとキリがありません!笑
児童文学は、想像力や感性を高めてくれるので、子どもはもちろん、大人になってから読んでもすごく面白いですよ!
海外作品だからと敬遠せずに、まずはぜひ有名なイギリス児童文学作品から読んでみてくださいね!
それでは今日も素敵なエンタメライフを!
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